「ツアーナースって何?どんな仕事なの?」
「一般的な病院の勤務とどう違うの?」
「求人に応募すればなれるの?給料は?」
ツアーナースという言葉は聞いたことがあっても、詳しいことは分からないですよね。
このページでは、ツアーナース専門会社のメディカル・ナビゲーター代表の赤沼が、具体的に分かりやすくご案内していきます。
この記事の監修者
2003年創業のツアーナース専門会社「メディカル・ナビゲーター」の代表。ツアーナースの年間求人数は1,000件以上で国内No.1。「医療従事者」と「旅行業務に精通したスタッフ」が現場に出る看護師の「育成」と「サポート」を行う体制を確立。登録看護師(正看護師・准看護師)数は2,000人以上、対応実績は累計1万件以上とツアーナースの分野では国内最大規模。
ツアーナースとは?
ツアーナースとは、1泊~の旅行に同行し、参加者の健康管理や病気・怪我をした際の応急処置や看護対応、アドバイスなどをする看護師のことです。
同行する旅行の例
- 小学校・中学校・高校の修学旅行
- 小学校・中学校・高校の移動教室(林間学校、自然教室など)
- 企業や団体の表彰旅行・研修旅行など
- 個人の旅行
旅行先は、国内だけでなく、海外のこともあります。
求人数が多いのは、学生の修学旅行や移動教室、ついで企業の団体旅行です。
ツアーナースという言葉が登場したのは1990年代で、他にも次のような呼び方があります。
ツアーナースの別称
- 添乗看護師
- 旅行添乗ナース
- アテンドナース
必要な資格は正看護師か准看護師です。
なお、ツアーナースと似た名前の仕事に、トラベルナースがありますが、内容は大きく異なります。
トラベルナースとは?
トラベルナースは首都圏から地方(その逆も)へ短期間(1~3ヶ月程度)就業することを指す場合が多いです。
日本国内ではトラベルナースではなく応援ナースと呼ばれることもあります。
続いて、一般的な看護師とはどのような点で違うのかをご案内します。
ツアーナースと一般的な看護師との違い
項目 |
ツアーナース |
一般的な看護師 |
資格 |
正看護師、准看護師 |
正看護師、准看護師 |
勤務先 |
旅行先 |
病院、クリニック、施設、企業など |
人数 |
1名(複数の場合もある) |
複数(の場合がほとんど) |
雇用形態 |
求人案件ごとの契約(短期、単発) |
正社員、派遣、パートなど |
給与形態 |
日給制 |
月給制、時間給制など |
業務時間 |
案件や状況によって変動 |
明確 |
教育、研修 |
無い会社がほとんど |
有→定期開催している施設が多い |
働き方 |
ライフスタイルに合わせて調整できる ※繁忙期・閑散期 有 |
シフト制(が多い) |
持ち物 |
自分の旅行用品一式、救急バッグ(支給) |
特になし(職場にある) |
服装 |
旅行内容に合わせた服装(スーツに準ずる服装が基本) |
就業先による |
コミュニケーションの対象 |
旅行者、その家族、旅行会社、添乗員、宿泊施設、交通機関、観光施設、現地医療機関など |
医療従事者、患者、患者の家族、各種業者、就業先従業員、など |
ツアーナースと病院などに勤務する一般的な看護師では、様々な点で異なります。
仕事中の服装はスーツ(ジャケット+スラックス)です。白衣やスクラブなどではなく、旅行の行程や内容に合わせた服装で業務をします。
行程によりハイキング同行に適した動きやすい服装の場合もあります。
※会社によって服装や髪型、メイクなどの自由度が異なります。
ツアーナースの仕事やスキル、所持品などを解説
ここからは次の内容をご案内していきます。
主な仕事
求められるスキル・能力
持参品・所持品
ツアーナースの仕事をイメージできると思いますので、ご一読ください。
ツアーナースの主な仕事
ツアーナースの主な仕事
- 各種関係者(宿泊施設も含む)への挨拶、打ち合わせ
- 必要な会議・ミーティングへの参加
- 生徒や職員とのコミュニケーション(教育旅行の場合)
- 旅行者の既往歴の把握
- 旅行中の健康状態や変化の把握
- 乗り物酔い、ケガ、病気、感染症などへの対応
- 受診の際の移動時間や移動方法の確認
- 受診の判断
- 看護記録、業務報告書の作成
- 適切な個人情報の取り扱い
主な仕事の1つとして、コミュニケーションが挙げられます。
業務をスムーズに進めるために重要で、例えば、事前に旅行会社や旅行主催者と、主に電話で打ち合わせをします。
先ほど、一般的な看護師との違いでもご案内しましたが、コミュニケーションの対象は次の通りです。
ツアーナースのコミュニケーションの対象
旅行者、その家族、旅行会社、添乗員、宿泊施設、交通機関、観光施設、現地医療機関など
看護師としての仕事ですが、医師がいないため、医師法第17条にあるように「医療行為(疾病の診断、治療、調薬・与薬など)」はできません
医師法第17条
医師でなければ、医業をなしてはならない。
医業とは医師の医学的判断及び技術を持ってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼす恐れのある行為。
引用)厚生労働省「医行為」について
旅行中、次のような仕事をします。
健康管理(病状の把握と体調のチェックなど)
旅行者が病気・怪我をした際の応急処置やアドバイスなど
次の行為を行う可能性があります。
旅行中行う可能性のある行為
旅行中に行う可能性があるのは、医療行為にあたらないもの、または応急処置として人命救助のために行うのであれば医師以外でも認められている行為です。
具体的には次の通りです。
- 救命措置に伴う心肺蘇生
- AEDの使用
- エピペンの使用
- 血糖値のチェック(穿刺・血液の搾り出しを除く)
- 気管内吸引
- 検温
- 血圧測定
など
この他、すり傷・切り傷、捻挫、熱中症、やけど、アナフィラキシー、けいれんなど、旅行者に体調の変化や病気、怪我などがあった場合に、状況をしっかりと見極めて、応急処置を行ったり、救急車を呼んだり、受診の判断や同行をします。
ツアーナースの求人に応募する場合は、常勤の医療職経験者がいる会社を選ぶようにしてください。
事前の教育や何かあった時のサポートが全く違うからです。
良かれと思って医療行為をして後から問題になったり、知識を押し付けて旅行者を不快にさせてトラブルになったり、救急の場合の判断を間違えてしまったりすることがあります。
参考)医行為範囲の明確化等について、厚生労働省「救急蘇生法の指針2015」
引用)厚生労働省「看護師等が行う業務」
求められるスキル・能力
ツアーナースに必要なスキル・能力
- 緊急性の有無や優先順位の判断力(迅速さ、正確さ)
- コミュニケーションスキル(連携、協調)
- 柔軟で臨機応変な対応力
- 旅行特有の医療知識と看護スキル
- マナー(身だしなみ、行儀・作法、言葉遣い)
- 体力
旅行中は常に旅行者の安全を第一に気を配ります。
時に、医療的な正しさよりも旅行者の意向を汲んで対応することもあります。
円滑なコミュニケーションを図るため、また、ツアーナースとして信頼していただくためには外見の印象も大切です。
服装や身だしなみ、言葉遣いに気を付ける必要があります。
この他、山に登ったり、長時間歩いたりすることがある移動教室では、体力が必要です。
メディカル・ナビゲーターでは、身だしなみとして次のようなことを推奨しています。
スーツやスーツに準ずる服装を基本とし、華美な色やデザインのものは控える
アクセサリーは上品で小さめの目立たないものにする
など
依頼者や旅行の内容によってTPOをわきまえた服装をしていただきます。
例えば、移動教室の場合はチノパンにポロシャツとなります。
持参品・所持品
旅行中の着替えや化粧品などは自分で用意し、持参します。
この他に、救急バッグを所持することになりますが、こちらは、派遣会社や手配の会社、依頼者(学校、企業、団体)から支給されます。
中身は次の通りです。
救急バッグの中身の例
- 内服薬(感冒薬、解熱・鎮静剤、整腸剤など)
- 外服薬(軟膏類、目薬、湿布など)
- 冷却シート
- 包帯、サージカルテープ、滅菌ガーゼ、バンドエイド
- マスク
- 聴診器
- 体温計
- ハサミ
- 棘ぬき
- ピンセット
など
救急バッグの中身や支給者は、案件によって異なります。
ツアーナースになるには?給料の相場は?などを解説
ツアーナースになる方法と給料事情についてご案内していきます。
ツアーナースになるには?
ツアーナースになるには、資格と求人案件への応募、必要書類の提示が必要です。
資格は次のどちらかが必要です。
正看護師免許
准看護師免許
※依頼者によっては1~3年以上の実務経験が必要な場合があります
手順は次の通りです。
ツアーナースになる手順
- 募集している会社に登録する
- 求人案件に応募する
- 仕事をする(旅行に同行する)
登録の際、資格を証明する書類などの提示が必要です。
一般的な看護師では、病院などで対面での面談をしますが、ツアーナースの場合は、面談が不要な場合があります。
登録完了後は、メールなどに求人案件が届きます。
※会社によって異なります
条件の合う求人に応募し、採用決定となれば、ツアーナースとして旅行に同行します。
参考)厚生労働省『保健師助産師看護師法の第五条「看護師」とは、第六条「准看護師」とは』
ツアーナースの給料(報酬)
ツアーナースの給料の相場は1日当たり1.2万~1.5万円です。
旅行は1泊~ですので、トータルでは次のような金額になります。
旅行の日程
| 給料(報酬)
|
1泊2日の場合 |
2.4万~3万円 |
2泊3日の場合 |
3.6万~4.5万円 |
2泊4日(海外)の場合 |
4.8万~6万円 |
3泊4日の場合 |
4.8万~6万円 |
3泊5日(海外)の場合 |
6万~7.5万円 |
4泊5日の場合 |
6万~7.5万円 |
4泊6日(海外)の場合 |
7.2万~9万円 |
6泊8日(海外)の場合 |
9.6万~12万円 |
国内でも海外でも1日当たりの給料の相場は同じですが、海外旅行は宿泊日数が多いため、同じ泊数でも報酬が多くなります。
気を付けたいのは、会社によっては次の費用を負担してくれないところがあることです。
交通費(打ち合わせ場所など)
事前打ち合わせ費用
食事補助
振込手数料
通信費
保険料
派遣会社、手配の会社によっては交通費等が報酬に含まれていることがありますので、しっかりと確認しておいてくださいね。
会社によっては、突然発生した支払いを負担してくれず、自己負担になってしまうことがあります。
メディカル・ナビゲーターでは、原則自己負担はありません。判断に迷う場合の経費もご相談次第で会社負担にできることもあります。
こちらも会社によって異なりますので、事前に確認してくださいね。
ツアーナースのメリット、デメリット
ツアーナースのメリット、デメリットをご案内します。
ツアーナースのメリット
ツアーナースのメリット
- 仕事をしながら様々な観光地に行くことができる
- 病院では得られない経験や知識を吸収できる
- 職場の人間関係に悩まされない(決められた期間の人間関係)
- 旅行者は毎回違うので新鮮
- 自分のライフスタイルに合わせて仕事を調整できる
- 一度にまとまった収入が得られる
- 臨床経験のブランクがあっても大丈夫
- 旅行者から元気をもらえる
仕事をしながら色々な場所に行くことができるのは魅力です。
仕事は基本的に1人で行いますし、案件によって人間関係が全く異なります。
そのため、相性が合わない人との人間関係に悩み続けることはありません。
ツアーナースのデメリット
デメリット
- 仕事や収入が不安定
- 業務時間が長くなることがある
- 病気などで急に休むことが難しい
- 体力が必要になることがある
- 医療者として1人で判断しなければならないことがある
- 専門会社が少ない
案件として多い修学旅行には「繁忙期」と「閑散期」がありますので、安定した収入を得たい人には向いていません。
それから、全ての業務を看護師一人で行うことに不安を感じる方は多いです。
ただし、この不安は育成やサポート体制のある専門会社の求人に応募すれば、大きく軽減できます。
登録する会社を間違えると、右も左もわからず仕事につくことになり、何かあっても的確なサポートを受けられなかったり、責任を背負わされたりすることがあります。
教育やサポート体制が整っている専門会社を選ぶようにしてくださいね。
まだまだ常勤の医療職経験者がいるような専門会社は少ないのが現状です。
メディカル・ナビゲーターでは、医療と旅行に精通したスタッフが、何かあった場合にサポートできるように待機しています。
また、看護師の方が働きやすいやすいよう、環境を作ったり、教育・研修を実施したりしています。
ツアーナースの成否は募集会社次第!選び方のコツを解説
ツアーナースの募集会社を選ぶ「3つのコツ」
- 専門会社
- 教育やサポートがある会社
- 歴史のある会社
ツアーナースの求人案件を選ぶ際、行き先や給料などの条件だけを見て判断している方が多いです。
もちろんそういった条件面は大事です。
ただし、上記のようなコツに沿って選ばないと、次のような会社に当たってしまうことがあります。
選ぶべきではない募集会社の対応例
- 何の教育も無く現場に出される
- 現場で起こったことへのサポートが無い
- 何かあっても責任は看護師になる
- 何かあった場合の費用が自己負担になる
- 看護師の怪我や病気の補償が無い
ツアーナースの仕事の成否は、募集会社にかかっています。
ここからは、募集会社を選ぶ3つのコツについて、詳しくご案内していきますね。
①ツアーナースの専門会社
一般的な転職サイトや転職エージェントでは、紹介報酬額の大きい仕事を案内しています。
このような会社に登録しても、そもそものツアーナースの求人案件が少ないです。
定期的にツアーナースの仕事をするなら、案件の多い専門会社に登録することをご検討ください。
メディカル・ナビゲーターは、ツアーナース専門会社ですので、求人案件が多く、仕事を見つけやすいですよ。
集合場所は東京発が多いですが、日本全国にも対応しています。
行き先は国内だけでなく、海外での業務もあります。
②教育やサポートがある会社
ツアーナースの仕事には看護師の知識だけでなく、旅行の知識も必要です。
一般的な募集会社のほとんどが、看護師の知識はあっても旅行の知識は無いため、教育体制が整えられていません。
また、募集会社の担当者が、ツアーナースの業務に詳しくなかったり、他の一般的な業務と兼任していたりすると、適切なサポートは受けづらいです。
今までツアーナースの仕事をしたことがないなら、教育やサポートの体制が整っている会社に登録することをご検討ください。
メディカル・ナビゲーターでは次の用意をしております。
業務マニュアル(MNツアーナースマニュアル)
事前の電話レクチャー
業界に精通したスタッフによるサポート(常時)
看護師自身が怪我をした場合の補償
定期的なスキルUP研修
例えば、業務マニュアルは、医療従業者旅行と業務に精通したスタッフが、お客様や現場の看護師の方の声を取り入れて作成し、必要に応じてブラッシュアップしています。
こうした体制があるため、初めての方でもスムーズに業務に取り組んでいただいております。
③歴史のある会社
ここ数年で旅行看護の派遣や手配をスタートした会社は、旅行会社(JTB・近畿日本ツーリスト・日本旅行など)や学校や企業などの旅行主催者との信頼関係を構築できていないことが多いです。
そのため、何かあった時の責任が現場の看護師に押し付けられてしまいがちです。
経験豊富な歴史のある会社を選ぶようにしてください。
メディカル・ナビゲーターの設立は2003年で、これまでに約2,000の団体様との取引き実績があります。
長期的にお付き合いのある旅行会社様とは良好な関係を築けており、安定的に仕事を発注していただいております。
ツアーナースの仕事や給料、求人についてのまとめ
まとめ
- ツアーナースとは、旅行に同行する看護師のこと
- 一般の看護師とは業務内容や給料体形などが異なる
- 専門会社が募集している求人案件に応募するのが吉
ツアーナースになるには、「未経験でもやってみよう!」という前向きな気持ちと、看護師の資格があれば、募集会社に登録して、送られてくる求人に応募するだけです。
ただし、1人で業務にあたるため、安心して業務をするために、事前の情報提供や業務中のサポートがある募集会社を選ぶのがコツです。
最初の一歩が肝心です。
登録する会社選びは慎重になさってくださいね。